君はバイクに乗るだろう VOL.146 |






俺が長靴を履くのは年に2、3回しかない。
周りの枯れ葉がヌッタヌタだったりするお墓の草むしりの時と、ここ2年くらいやってない気がするけど雪かきする時。
雨の日、電車で女の人のいろんな長靴を見るのは大好きなのに、長靴を履いて電車に乗ったことがないのだ。
でも、こないだの日曜日は長靴で出かけた。
土曜日の予報は最悪だった。
これから台風来るよ。
雨がどんどん強くなるよ。
じゃウチでゴロゴロしてれば〜。
とも思ったけど選挙だし、終わらせときたい仕事あるから会社行きたいし、つか「明日は長靴で行くぞ!」って思ったらなんだか盛り上がっちゃったのである。
長靴といえば中学時代、毎日朝から赤ら顔で酒臭かった尾張先生(担当:英語)の、ズボンをインした黒のゴム長姿を思い出す。
つか三陸のド田舎の靴屋の長靴コーナーには、子供用の黄色いやつと大人用の黒いのしか置いてなかったのである。
ちなみに我が母校、宮古市立第一中学校にはもう1人、毎日朝から赤ら顔で酒臭い上にビンタを得意とする山崎(担当:国語)ってアルコール & バイオレンス教師もいた。
ニオイの記憶をたどると尾張先生は日本酒で、山崎はウイスキーだったと思う、山崎だけに。
それはともかく俺の長靴は以前、先輩の釣りムックを手伝った時にもらった釣り用のダイワ製。
釣り用なので、岩場で滑らないようにソールには厚さ1センチ弱のフェルトが貼ってあり、デザイン的には意図不明のメトロン星人っぽいラインがチャームポイントである。
家から長靴を履いて出かけるだけなのにムチャクチャ新鮮で、雨が楽しみというか、もっと降って〜。たくさん水たまり作って〜。って感じ。
投票所の中学校に向かっていると願い通りに雨足が強くなってきた。
校門から体育館まで、六角形のコンクリつの石つのが敷き詰められた道の途中には助走をつけないと飛び越せない級の水たまりが出来ていた。
手前ではカッパは着てるけど長靴じゃないオバちゃんが躊躇している。
その横を勇猛果敢に、歴戦の雄のごときに、水たまりなんか知ったこっちゃない感じでバッシャンバッシャン言わせながら突破する。
なにこの無敵感。
長靴サイコー。
次の日、台風が川崎の田舎を通過したのは6時ちょっと前だった。
冬支度ついでに激しく家を片付けた結果出た70リットルのゴミ袋6個、ワレモノを入れた紙袋4個、段ボール2束を捨てにゴミ置き場まで行ったり来たりしていると雨が急に強くなり、出かける前からびしょ濡れになった。
ショパンの調べどころじゃない横殴りの雨音を聞きながらシャワーを浴びる。
また濡れるのもしゃくだし、もう少し雨が弱くなったら出ようかな。
と思いながら歯を磨いていると、赤ちゃんが急に泣き止むみたいに外が静かになった。
窓から外を見る。
あれ?
空が明るい。
つか降ってないじゃん!
これなら傘も要らないね。
午後からは太陽も出るみたいだし。
でも俺は長靴で出かけた。
10月頭、両国の横綱町公園を散歩してたら雨でもないのにピンクの長靴を履いた女の子がいたけど、君の気持ちがちょっとだけ分かったよ。
レディース & ジェントルメン & ザス!
いつも。
ときどき。
今日初めて。
すべてひっくるめて、読んでいただきありがとうございます。
これから雨が降ったら長靴で出かける。絶対。(総合司会・坂下 浩康)
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