君はバイクに乗るだろう VOL.145 |






その病気に気づいたのは10年前だった。
野暮用で帰省して、親戚のオバちゃんにもらった大量のワカメを土産にウチに帰ると、嫁さんの友達が遊びに来ていた。
1人はクサガメに似たバツイチのオバちゃんで、元旦那が海外勤務の仕事をしていたらしく、なんにも聞いてないのに「バンコクに住んでた頃は……」とか「シンガポールにいた時に……」とか、やたら帰国子女つか帰国ババア感を出しまくってきてウザさ満点。会って10分後には、180度の油が煮えたぎる鍋に頭から叩き込んで天ぷらにして、気取ったことばっか言ってるくせに天ぷらじゃんお前。しかもマズそうな。半額になってても誰も買わないよ。廃棄。という判定結果が出た。
もう1人は名古屋出身で、顔も声も図体も派手なオバちゃん。
このオバちゃん、図体は松下由樹(今の)な割に声が甲高くてやかましいのはともかく、誰かが何か言うとかなりの頻度でこう応えるのが気になってしょうがなかった。
「ハイハイハイハイ」
基本4連なんだけど「ハイハイ」とダブルで止めてみたり、不意に「ハイハイハイハイハイハイ」と6連バージョンをブッ込んできたり、相当な使い手というかこの「ハイ」。「ハイは1回でいいの!」の「ハイ」とは種類が違うよね。
あなたが言ってること、よ〜く分かりますよ〜。もしかしたらあなた以上に理解してますよ〜。って演出なんだろうけど業務的というか空気を埋めるための、使い捨てのハイって感じだった。
言われる側は気持ちいいのか、これ。
そんなことを思った数日後、1ヶ月に1回くらいウチに来ているらしいダスキンのオバちゃんと遭遇した。
だいたいオバちゃんが現れるのは日中なので、それまで俺は会ったことがなかったんだけど、その日はたまたま昼過ぎまでウチにいたのである。
部屋でだらだらしていると、スクーターでやってきたオバちゃんがウチに上がって嫁さんと話している声が聞こえてきた。
このオバちゃんの声も甲高いなあ。
と思いながらパソコンを見ていると……。
「ハイハイハイハイハイハイ」
6連じゃん!
しかも乱打。
6連ハイ使い過ぎ……あ。もしかしてオバちゃん、病気なんじゃない?
そう思った俺は、なんのヒネリもなく「ハイハイ病」と名付けた。
患者は結構いると思うよ。
俺も感染してるかもしれない。
だから万が一「ハイハイハイハイ」言いそうになったらグッとこらえて「ヘイヘイヘイヘイ」って言うつもりで生きている。
レディース & ジェントルメン & ザス!
いつも。
ときどき。
今日初めて。
すべてひっくるめて、読んでいただきありがとうございます。
一番嫌いなのはマンボウやしろの4連ハイです。(総合司会・坂下 浩康)
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