更新後記 VOL.129 |






もうじき梅雨も明けるってーのに俺んちの和室には石油ファンヒーターが置いてあった。
冬に注入した灯油が一部残ったまま箱に入れて押し入れにしまうのってなんか嫌じゃん。
燃料タンクに入ってるとはいえ、押し入れの中に灯油があるのって臭そうだし、猛暑で高熱になった押し入れ内でなんらかの稀な、万が一な、想定外な自然現象が起きて引火しちゃうかもしれないじゃん。
こいつを最後に動かしたのは3月末だったか。
「使い切ってからしまおう」と決めてから軽く4ヶ月は放置していたことになる。
いや、ただ放置していたわけじゃない。
ある日、近所に住んでる嫁さんの親戚のオバちゃんが俺がいない時に遊びにきて、「ホヤちゃん、これ好きでしょ?」とぬいぐるみを置いていった。
オレンジ色のステゴザウルス(全長30センチくらい)
確かに好きだった。
でもそれは親戚のオバちゃんの娘がまだ幼稚園に通っていた頃、家に遊びに行った時に飾ってあったのを見つけて、「欲しい」つった時……娘は今年から大学生になったから10年以上前……つまり過去形なので、今見たらそうでもない。
でもまあ「よく覚えてたなあそんなこと」と小さな感動もあったので預かることにした。
で、石油ファンヒーターの上に置いた。
意外としっくりきた。
てな感じでステゴザウルスのステージとして活用してきたんだけど、さすがにもう片付けないといけない。
ファンヒーターが収まる押し入れの下段の中の一切合切を出して掃除機をかける。
無駄に灯油を消費するのもなんなんで、押し入れに熱風を浴びせて湿気を取ることにした。
燃料タンクを持った感じだと灯油の残量は5分の1程度。
冬ならぼちぼち給油しなくちゃって感じだし、持ってもせいぜい数時間ってとこだろう。
スイッチ、オーン!
シュゴゴゴゴ。
灯油の香りがしてる。
灯油の揺れかた。
最高温度30度に設定された石油ファンヒーターが元気よく回り出した。
でも室温が27度くらいなので10分もしないうちに設定温度に到達。
そこから省エネモードに切り替わり、シュゴゴゴゴ言ってたのが「点いてんの?」ってくらい静御前になってしまった。
ま、いっか。
衣装ケースにスーツケース、その他大小の箱、箱、箱。
押し入れから出したもろもろを整理する。
なんだこの箱?
あ!
「時代劇見ながらこれ使って日本酒飲もう」と思って嫁さんの親戚んちでもらってきたけど1回も使ってない一膳セット。
重っ……これは?
うお!
先輩が北海道土産でくれた熊の置き物(顔のみ。でも直径30センチくらいでちょっとした鈍器ばりな重量)
ここは捨てるに捨てられない物たちの一時預かり所になっていたのか……。
もしかして、このちょっとした大掃除を見守っているステゴザウルスも捨てるに捨てられなかったんじゃないのか……。
つか……暑い。
暑いんだよこの部屋!
静御前のまま3時間が過ぎた頃、ファンヒーターが「延長しますか?」と聞いてきたので、いやもう出かけるし。と、その日の営業は3時間で終了した。
ってな感じの展開で4、5日間。
数時間で燃料切れになると思っていた石油ファンヒーターは合計20時間くらい稼働し、最後は「給油してください。残り56分」とか冬場は見たこともない遺言めいた表示を出して力尽き、押し入れに帰って行った。
レディース & ジェントルメン & ザス!
いつも。
ときどき。
今日初めて。
すべてひっくるめて、読んでいただきありがとうございます。
【教訓】夏の石油ファンヒーターは燃費がいい気がする。(総合司会・坂下 浩康) ★ ★ ★