映画『赤い季節』潜入記:後編 ④ ~朝日を見逃した男~ |
撮影も後半に突入した。
3月17日夜、次のロケ地、高崎に向かう。
集合場所は山の中。
地図だけじゃ不安なので、ライターのノア君に借りたボンゴに付いてるナビを練習がてら使ってみよう。
超便利!
な、ハズだ。
家の近くでガソリンを入れ、246から環8へ。
環8ずーっと行って関越だよね。
と思っていると瀬田を過ぎたあたりでナビがなんか言い出した。
「この先、右方向です」
え? 首都高に乗れと?
首都高から外環経由で関越なの?
それってむちゃくちゃ遠回りなんじゃないの?
「そうだけど信号ないから楽じゃん。環8ガラガラだからこのまま行っちゃっても別にいいけどね」
とか言ってくれればいいのに、「この先、右方向です」の一点張りで譲らない。
そうまで言われると不安になる。
俺はナビに言われるがまま首都高に乗ってしまった。
でもやっぱり違うよ。
と思い直したけど池尻まで行っちゃって無駄に900円を払って降り、なんで山手通りを走ってるんだろう俺は……とか思いながら都内を抜ける。
使っていくうちに、ナビは「右方向」って言う時と「右です」って言う時とあり、「右方向」は「できれば右車線にいたほうがいいかもよ〜」で、「右です」は「そこ右! 右行かないとアウト!」って感じなんだということが分かったのだが初心者だからしょうがない。
とかなんとか言っているうちに日付は変わり、俺は45歳になった。
家出して、ギターケースに座ってクリーム色のバスを待ってた時に彼に出会ってから30年が経ってしまった。
やや小雨もありながら高崎着。
高崎市吉井町多比良。
ってナビには入れたけど、山へと入っていくキッカケが分からない。
クルマを止めて、「あの~……」と地元に人に聞こうにも真夜中で誰もいないし、コンビニもガソリンスタンドもない。
こういう時は沖ダイヤル。
困ったら沖主任に電話で泣きつくのが俺のルールだ。
沖く〜〜ん!
温泉の看板?
あー、あったあった。
あった気がする。
と、引き返して唯一の目印、温泉の看板が立っているT字路を曲がり、え〜、大丈夫なのかこのままで……って感じで林道を登っていくと、上のほうに不自然なまでに明るいエリアが出現した。
さっきまで降っていた小雨が上がり、見上げれば満天とまではいかないけど星空が広がっていた。
夜の街を抜け、山小屋を目指すって感じでFTRと健(新井 浩文)の撮影を済ませてベースに戻ったのが3時ってとこだったか。
スタッフ一同は休む間もなくさらに山を登り、頂上にある展望台へ移動していく。
とりあえず用もないのについていってみると、素晴らしい。
この見晴らし。
眼下に広がる高崎の夜景。
でも風の強さと冷たさがハンパじゃない。
キレイだな〜。
クソさみぃ!
それ以外の感想は特にありませんって感じ。
しかしそんな中でも全スタッフはせわしなく撮影準備に動き回っている。
朝日の中で健と剛(新居延 遼明)を撮る。
その1シーンのために、スタッフ一同は一致団結して全力を注ぎ込んでいるのだ!
とか言いながら寒さに負けてこっそり山を下りた俺は、「朝日がキレイに出ますように」と祈りながら寝袋にくるまったのだった。
気が付くと外はもう明るい。
そしてZ1RとFXを運んでくれたAIR FISH(http://www.airfish.jp/)の東山マストー君と、助っ人の立花の河島さん(http://youwbike.exblog.jp/17538659/)もいつの間にか山を登って到着している。
これからCBの健、Z1Rのアキラ(村上 淳)、FXのタケシ(中村 達也)の走行シーンがある。
山の中腹で一発。
そして山を降りた直線道路でももう一発。
俺とマストー君と河島さんで3台を運ぶ。
基本的に現場では控え室を兼ねたロケバスが待機している。
ロケバスの運転手さんは徹底的に「待ち」の仕事だ。
駐車場や道ばたでひたすら撮影が終わるのを待ち、役者さんやスタッフを乗せて移動する。
メインの1台は20人くらい乗れそうなコースターだったか。
いわゆるロケバスな感じのやつ。
運転手さんは30代前半ってとこで、見ていると、ときどきバスから降りてきてタバコを吸ったりコーヒーを飲んだり、と思いきや運転席に戻ってスポーツ新聞を広げたり、読み終わって寝たりしている。
ロケバスは3台の撮影で使った直線道路にも同行していたのだが、現場ではスタッフの輪に積極的に加わるでもなく業務に徹している感じで特に主張するわけでもなかった30代前半の運転手さんが、撮影場所を確認し、邪魔にならない待機場所を見つけた後、突然、猛スピードでバスをバックさせつつ脇道に曲がったので驚いた。
速い!
コースターはバックすると速い!
ダテにロケバス転がしてねえぜ。
俺はそこにロケバス野郎の意地を見たのであった。
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撮影はわりかし順調に終わり、バイクを積み込んだ俺とマストー君は明日からのロケに備えて栃木に向かった。
積んだり下ろしたりの回数を少しでも減らそうとCBとFTR、Z1Rの3台を栃木へ搬送し、この日のうちにFXだけを都内で返却する段取りだ。
そして撮影は佳境に入っていくのである。

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