映画『赤い季節』潜入記:前編 〜初めてのロケハン〜 |

映画のお手伝い。
縁あって、そういうことになった。
業務内容はまあ、「この男が乗るバイクは何がいいだろう?」「こんなんがいーんじゃないっすかね~」みたいなことである。
タイトルは『赤い季節』(http://sotb-project.com/)
作品は見事に完成していて10月13日の公開を待つばかり。
つまり俺の業務はとっくに終了しているわけだが、映画・映像作りのプロ達に紛れていろんな現場でいろんなものを見てきたので書いてみようかなと。
というわけで、映画『赤い季節』潜入記:前編、いきヤ〜ス。
★ ★ ★
「明日ロケハン行きますんで坂下さんも来てください」
「いっすよ〜」
「じゃあ、朝7時に新宿スバルビルに集合ということで」
早い。
それはちょっと早くないかい沖君(制作主任)
7時に新宿つーことは川崎の田舎からだとウチを6時ちょい前には出なくちゃダメじゃん。
2月の6時ちょい前つったらまだミッドナイトですよ。
いーじゃんいーじゃん、10時とかでさ〜。
と強く思ったのだが、ロケハンの早朝発とスバルビル集合というのは業界的には当たり前らしい。
当日、スバルビルの前に行くと、ロケバスやワンボックスが4、5台並んでいた。
なるほどここは聖地なのだろう。
でもってどのクルマに乗ればいいんだろう。
と思いながら缶コーヒーを飲んでいると、監督をはじめ10数名のスタッフが続々と集まってきた。
この日初めて会う方々も多かったので、挨拶をしたり名刺交換したりしてからクルマに乗り込んで出発を待っていると、集合時間から20分くらい遅れて久保田君(共同脚本・助監督)が登場。
見るからに、終了予定時間を軽くオーバーして朝4時くらいまで掛かっちゃった現場から直行した感じの顔をしている。
大丈夫か、久保田助監督。
とも思ったのだが、俺は座席の目の前にあるオニギリが気になっていた。
オニギリ2つとお新香が入った朝食パックが3つ重ねて置いてある。
それは誰かが個人的に買ったのではなく、明らかにこのロケハン部隊用に用意された雰囲気をぷんぷんに放っていた。
でもどういうシステムなんだろう。
ご自由にお持ちください的なのか。
それとも係の人にひとこと言ったほうがいいのか。
そもそも誰が係なのか。
このオニギリにも映画業界の掟というか暗黙の了解があるっぽい。
クルマに乗り込んでくるなりオニギリをスッと取って即座に食べる人もいれば、取らずに座ってすぐに眠りにつく人もいる。
その境界線が分からない。
食べていい人とダメな人がいるのだろうか。
その審査基準が分からない。
聞くに聞けない。
でも腹減った。
そんな俺の心の葛藤なんてお構いなしに、沖主任が運転するワンボックスは黙々と追い越し車線をブッ飛ばしていくのであった。
結局オニギリには手を出せず、悶々としながら最初の現場、栃木インターから小1時間ほど走った山の中に到着。
そこには山小屋があり、その近辺も含めたロケハンになるらしい。
と、山の入り口に1台の白いRVが停まっている。
それを見て監督が言った。
「モロカジさんっぽいなあ」
ぽいんだ?
停まり方というかたたずまいというか、「もう着いてる!」って感じがモロカジさんぽいんだ?
その時点で俺はモロカジさんが何者なのか分からなかったのだが、モロカジ号はウルトラ警備隊の隊長の愛機というか、「出動!」って感じがした。
★ ★ ★



★ ★ ★
ロケハン前、現場の草っぱらで全員が輪になって自己紹介をした。
ダウンジャケットだの革ジャンだの、それぞれ思い思いの防寒ウエアを着込んでいるスタッフの中にあって、モロカジさんは1人、パッと見ラグビー部の監督風な、動くとシャリシャリ言う黒いKAPPAのジャージ上下で現れた。
手には年季の入った白い革のグローブ。
「諸鍛冶です」
モロカジさんはなんの係かは言わなかったのだが、それはいわゆる言わずもがなってヤツで、俺以外のスタッフ一同は当然知ってる感じである。
聞けばモロカジさんはアクション担当。
なるほど。
さっき監督がモロカジ号を見て言ってたモロカジさんっぽさがなんとなく分かった気がする。
そして、アクションシーンの検証が始まった。
俳優の代役となったスタッフが森の中に配置され、セリフを読み上げたり、「バーン!」と口で銃声を叫びながら走り回ったりする、そのひとつひとつの動きに対してモロカジさんのチェックが入る。
それは監修・アクション指導の枠を超えたモロカジ劇場だった。
まず体のキレが尋常じゃない。
動き出す前の「せーの」みたいな間が一切ないのだ。
「ここで一発バーン! から……」と言ったと思ったら、山小屋の下の平らな草っぱらから、そこそこの急坂、しかも草ボーボーで道がないところを途中でよろめくこともなく雑草をなぎ倒して一気に上まで駆け上ったり、「バーン、撃たれました〜」と言うやいなやひっくり返ったり、「ここで撃つ〜」と言うなり体を反転させ、ダッシュしてぶっとい木に背中から張り付いて身を隠したり、すべてのアクションが1速じゃなくてニュートラルからイキナリ5速みたいな感じなのである。
指ピストルの構え方も板についている。
「指でピストルを作ってみて」って言われれば誰でも出来るだろうけどモロカジさんの場合、どんな動きの中でも親指と人差し指が90度のまま「ピン!」と保たれていて美しい。
白い革のグローブがまた効いてるよな〜。
俺はモロカジさんを見てるだけの人になっていた。
★ ★ ★


★ ★ ★
午後の部は昼メシを食べたばんどう太郎からちょっと行ったところにある川沿いの道からスタートした。
道ばたに小さな不動堂と待合室付きのバス停がある。
さっきの山小屋もそうだけど、よく見つけるよなあ、こんなトコをなあ。
つか今日のロケハンの前には、制作部の人達がゼロから場所を探すというロケハンに行ってるわけでしょ。
中には行ってみたけどイマイチだったってこともあるんだろうし。
その下地たるや……。
とか考えたら気が遠くなってきた俺なのだった(眠気も込みで)
★ ★ ★






★ ★ ★


