笹木 竜也 & Triumph T120R Bonneville(2011 0723) |

Q2:「バイクってサイコー!」って思った時。
Q3:史上最悪の出来事は?
★ 1 ★
昔からクルマが大好きで、家族や周りの人の風当たりもあって、バイクには目もくれませんでした。
でも、大学で知り合った非常勤講師の方と仲良くなり、家が近いこともあってBMW R100CSで家に送ってもらった時に、「バイクってこんなに楽しくて気持ちの良い乗り物だったのか!」と衝撃を受けました。
そして、そのバイクがバリバリのカフェレーサーだったので、そこからカフェレーサー好きになりました。
★ 2 ★
たくさんの仲間に出会えて、ネットワークがめちゃくちゃ広がったこと。
バイク1台でこんなに世界が広がるのかと感動しました。
あと、方向音痴と引きこもりが治ったことかな。
★ 3 ★
クラブマンに乗っていた頃、バイクを停めていたらイタズラされたこと。
メーターバイザーがひん曲げられてて、なぜかトリップメーターのダイヤルにも強い力がかかった跡があった。
大したことなかったけど、愛車をイタズラされてキレない奴なんていませんよね。
T120Rに乗り換えてまだ慣れていない頃、信号待ちでエンストこいて、サイドスタンドかけずに跨ったままキックしようとしたら、立ちゴケしてバイクとガードレールに挟まれたこと。
バイクが傷つかなかったのは良かったけど「自分情けねぇな……」と思いました。
★ ★ ★
あのへんの木陰どう?
つって、角のコンビ二の前の横断歩道を渡ろうとすると、黒いパンツに白いシャツのチャンネエがチラシを持って近づいてきた。
チラシの内容も見ずに断って木陰に向かう。
なんだか風が抜けていかない感じ。
激しく蚊に刺されそうな気もする。
つまり木陰はイマイチだったので再び横断歩道を渡り、チャンネエの前を通過して逆方向へ。
さらに反対側の歩道に渡って歩き、コンビニを起点として1周するようなカタチで俺はまたチャンネエの元に戻った。
さっきから数えて3回もすれ違っていたのに気が付かなかったのだが、チャンネエはそれほどチャンネエでもなかった。
ちょっと休むし〜。
てな感じで、かったるさ満開でタバコを吸っているチャンネエの横には立て看板があり、5780万円のマンションのチラシが貼り付けられている。
5780万円のマンションをこの街の住人でもない俺に買えとは無謀なアタックもいいところなのだが、コンビニの前で笹木君を待ちながらチャンネエを見ていると、チラシを渡す相手にはある程度の審査基準があることが分かってきた。
あのオジさんには絶対いく。
この学生風はスルー。
一見学生っぽいけど社会人1年生っぽくもあるオニイちゃんにはい……くと見せかけていかず、その向こうから来たヒジまである長い白手袋をして犬の散歩をしているマダムにはいく。
1人暮らしのOL風にもいく。
つか、おい!
受け取れよ! OL風!
いつしか俺はアタックを続けるチャンネエを応援していた、さっきは一発で拒否ったくせに。
いわば俺はチェンネエ見守り隊だった。
いい気なもんだよねェ、おまいさん。
心の距離感が勝手に縮んだので「大変ですね。いつまでやるんですか?」と聞くとチャンネエは「今日1日です!」と健気に答えたので、俺はますます見守り隊。
よく見るとチャンネエは、横断歩道の信号の細い棒の部分じゃなくて赤青黄のレンズが入った楕円形の部分の陰に入ってさりげなく暑さをしのぐというサバイバルテクニックを駆使していた。
とはいえ、炎天下の甲子園で朝から晩まで1人で外野を守ってるみたいなタフな1日じゃないか。
俺はチェンネエに敬意を表した。
つーてもコンビニのひさしの陰で涼んでるだけだけど。
少しすると笹木君がやってきたので見守り隊(1人)を解散し、撮影隊(1人)を結成した。
トラに乗り出して2ヶ月の笹木君。
いいねえ、ネクタイ。
「俺はこっちで」みたいな反骨のニオイがする。
そして、「授業はないんだけど明日の準備しなくちゃいけない」ってな日曜日。
普段は基本的に禁止されてるけど日曜日だからいっか、みたいな感じで学校に乗りつけたバイク好きの教育実習の先生的なニオイもする。
いつもはクルマが並んでいる駐車場(イメージは岩手県宮古市立第一中学校。誰が分かんのそれ)に悠々とトラを乗り入れて、クルマ1台分のスペースに縦に真っすぐじゃなくて斜めに「デ〜ン」と停めてみる。
校庭にも校舎にも人の気配はない。
玄関で洋服を脱ぎ捨て、全裸で叫びながら校内を走り回りたい衝動に少し駆られながら実験室へ。
実験の下ごしらえを終え、校舎を出る頃には少し薄暗くなっていた。
メットをかぶってトラにまたがり、キックをしようとした瞬間、背後に人の気配を感じて振り返ると、学校の金網に1人の少年が張りついていた。
「チミはそこで何をしてるんだ!」と怒る理由もないのでスルーして。
でも、いつもより長めに暖機して。
少年の心臓とバーチカルツインエンジンの鼓動、共鳴して。
ってマンガどう?



