彫風 & Kawasaki Z1000(2011 0626) |

Q2:「バイクってサイコー!」って思った時。
Q3:史上最悪の出来事は?
★ 1 ★
物心ついた時には、自分好みの人間はバイクに乗っていた。
幼い頃は、車種よりもバイクとその乗り手を見て「カッコいいな~」なんて思っていた。
Zに関しては『MADMAX』
★ 2 ★
叫んだことはないなぁ。
自分にしか解らない、バイクと自分の絆というか……他人には理解できないことがあった時。
★ 3 ★
自分のミスでバイクを壊してしまった時。
★ ★ ★
夜、メシ食うの面倒くさいとか、朝、二日酔いで水しか飲みたくないとか、そういう日が続くと指が痩せる。
指が痩せると結婚指輪がスカスカになって、シャワー浴びてる時に落として、排水溝に引っ掛かってるところを救出したりするのだが、3、4年前の年末、友達と飲んだ帰り、終電だー、なんつって人ごみの中、スクランブル交差点に向かって走っている時に落としたことがある。
あ、今落ちた。
という確固たる瞬間がない。
そして酔っている。
巨大なスクランブル交差点の歩道には赤信号を待つ酔っぱらいの群れ。
でも探すしかない。
地面に這いつくばる。
ほの暗い明かりを頼りに酔っぱらいの足元から足元へ動き回る。
絶対見つけてやる。
いや、この状況じゃ無理。
心も体もフラフラしていた。
「どうしたんですか?」
1人の男が寄ってきた。
「指輪落としちゃったみたいで……」
俺の答えを聞くやいなや、彼は地面に這いつくばった。
そしてスゴいイキオイで酔っぱらいの足元をかき分けて進んでいく。
なななな、なんていい人だ!
「あった!」
彼は、地面に落とした指輪探しのプロかっちゅーくらいのスピードで指輪を発見してくれた。
彼の手の平には銀色の指輪が光っていた。
「良かったですね! じゃあ、気を付けて!」
スーパーヒーローじゃん!
あのスーパーヒーローは今、きっと幸せだ。
奥さんは小西 真奈美に似ている。
いや、小西 真奈美本人かもしれない
いいなそれ。
でも、そうじゃなきゃいけない。
って、あの夜以来なんだよね、池袋。
彫風さんの仕事場に向かう。
L字型の公園。
路地。
路地路地。
Zが見えた。
築何年だココは。
ザ・昭和のアパート。
セットみたい。
奥のドアに、うすぼんやりと「彫風」の文字が見えた。
突き当たりの部屋が彫風さんの仕事場だった。
一番手前とかじゃなくて、奥だよな、と思った。
小さなアパートなので手前から奥まで10歩くらいなんだけど、いきなりの角部屋と奥までの10歩じゃ緊張感が違う。
10歩=じっぽ。
いやなんとなく。
中は異界だった。
まず、涼しい。
一面には黒い幕が張り巡らされて、昼も夜もない感じ。
黒い幕の上には、彫風さんが今まで彫ってきた絵の数々が写真になってびっしり貼られている。
道具を滅菌・殺菌する機械もあって、病院っぽい感じもある。
でもってここに寝っ転がるわけか。
でっかい灰皿。
彫り師の仕事場に来たのは初めてだ。
道具も見たい。
入れ墨ってどうやって色を付けるのか?
手彫りって?
和彫って?
毛深い人はどうすんの?
どこが痛いの?
聞いてるうちに、想像力豊かな俺は後頭部の右上が熱くなってきた。
彫風さんは独学、というか自分で自分に彫ることから彫り師の道を歩き出した。
自分で自分にぃ〜……。
血とか……彫る時の肉が切れる音とか……。
って聞いてまた後頭部が熱くなってきたので俺は彫り師に向いていない。
いろいろな画集が詰まった本棚。
振り返るとマンガの棚があって『キリン』が並んでいる。
彫風さんはカタナが欲しかった。
が、それは靖国神社のあたりで売っていた、GSXってつかないカタナ、つまり日本刀だった。
安い買い物ではない。
本気で考えていた。
「でもやめました。買ったら絶対試したくなるから」
彫風さんは、「そうですねえ」と相づちを打っていいのか悪いのか困るようなことをサラッと言って、こう続けた。
「自分にとって、日本刀と同じくらいの一生物って考えたら、Zしかなかった」
今回のZは2台目で、近所にタバコ買いに行ったり通勤したり用。
日本刀の誘惑を断ち切って買ったMK2は、現在ドラッグレース仕様になっている。
つか、日本刀を諦めてZ買ったなんて人、この世で彫風さんぐらいだろうなあ。
『骸骨屋 彫風』はZが目印です。ちなみにZのピンストライプも彫風さん作。
(http://www.horikaze.com)


