花島 賢典 & Lambretta SX200(2011 0515) |

Q2:「バイクってサイコー!」って思った時。
Q3:史上最悪の出来事は?
★ 1 ★
高校生の時に出会ったSKAという音楽が今でもずっと自分の中心です。
Mods、Skinheads、Rudeboys……文化や音楽、服、もちろんスクーター……これらが全部つながっていて、今の自分を形成する大きなベクトルになっていることは間違いありません。
★ 2 ★
風を受けながらマシンを操ってる感が最高ですね。
あと、みんなで走ってる時の信号待ちとかでちょっとした会話をしたりするのが好きです。
クルマと違ってみんなで気持ちを共有できる時間ですよね。
★ 3 ★
夏、千葉の実家から帰ってくる時に雨が降ってきて、それがだんだん大降りになって、しまいには雨具もまったく役に立たずにビショビショになり、雨が顔に当たって痛くてスピード上げられないし、キャブレターに雨水入りまくってるし、1人だったからもう不安で不安で……。
どうにか無事到着したけど、その日はもうグッタリでした。
★ ★ ★
ふるさと。
それも第二の。
そこそこ持ってる人がいると思う。
生まれた育った街。
そして生まれ育った後、さらに育った街。
第二の故郷とは、だいたいそんなもんだろう。
でも第二じゃ収まらない。
人間はぐんぐん育つんだから。
完全に発育が停止して「痩せた?」「痩せ過ぎじゃね?」「どっか悪いの?」とか言われるような年になっても心は中3なんだから。
数えてみたら、花島君の住む街は俺の第八の故郷だった。
まだまだ増えるよ。
いつかは「千のふるさとを持つ男」と呼ばれるようになってスカイハイで入場しようかな。
せず。
なにしろ第八の故郷だから勝手知ったるってヤツだぜ。
花島君とは連休中、第一の故郷に戻っている時に撮影日のヤリトリをした。
「改札出て右行ってすぐのガード沿いあたりを予定してます」なんて、さも住んでいたかのようにメールを打った。
そう。
さも住んでいたかのようにであって、住んでいたわけじゃない。
この街に住んでいたのは先輩で、俺はその自宅兼事務所にちょいちょい仕事しに行っていたのである。
先輩は芸人だ(職業じゃなくて生き方というか降り掛かってくる災難とかが)
そして俺には出来ない言葉のつむぎ方……いわゆる「節(ブシ)」を持っている。
輝く1行が書けるライターだ。
しかし、そっち方面には物凄い才能を噴出させるのに、整理整頓能力がない。
ほぼゼロといってもいいだろう。
部屋中、食べ終わったコンビニ弁当が入ったレジ袋で埋め尽くされているわけではないのでゴミ屋敷とまではいかないのだが、とにかくあらゆる物が置きっぱなし出しっぱなし脱ぎっぱなしである。
物が部屋の四隅を占拠している。
そして上へ上へと領地を拡大している。
先輩が書いたり携わったりした各種の本や雑誌が高層タワーと化している。
「あの地図どこだっけ?」
なんつって、積み重なった本や雑誌をわさわさしているうちにタワーが崩壊。
アイスランドの火山の噴煙ばりにホコリが吹き上がる。
もう、目がしょぼしょぼ。
2、3歩あるけば靴下の裏に変な毛が確実に1本はくっついてくる。
ここにいたら、この部屋でしか繁殖しない変な細菌に取り憑かれて変な病気になるだろう。
ある時、先輩の部屋で仕事をすることになったのだが、その状況が圧倒的に我慢ならないので丸1日かけて大掃除を敢行した。
とにかくホコリが凄まじい。
なにしろ掃除機自体がホコリまみれなんだから。
全方位的に積み重なっている山を解体していくと、資産価値がありそうなお宝は一切発見されなかったのだが、10円以下の小銭、ゼムクリップ、100円ライター、3分の1くらい残ってるけど箱がメシャメシャに潰れたティッシュ、靴下(片方)、耳かき、綿棒……といった使えるような使えないようなグッズたちが大量に発掘された。
夜になると先輩は「メシでも行きますか」なんつって定食屋なんだけどほとんどの客が居酒屋として使ってる店からパトロールを開始。
その後は明らかに酒のイキオイでもって、パンチパーマのオバちゃんが頼んでもいないツマミを勝手に出してくる小料理屋、そのオバちゃんが娘にやらせている地下のスナック……といった店をハシゴする。
どの店も地元の人しか相手にしていないというか、地元の人じゃないと入る気にならない店なのだが、先輩の地元への溶け込みぶりは驚異的だった。
女将やマスターと顔見知りなのはもちろん、各店の常連から「アベちゃん(仮名)久しぶり」なんて声を掛けられるだけならまだしも、「あの店のアイツはどうの」「あそこの社長はどうの」「あの人、最近見ないけど」といった噂話にすべて対応。
そして話の流れに即座に乗っかり「あそこの社長はB型だから」「あの人、生まれが紀州だし」といった些細な情報から噂の主人公になっている人物の全人格を断定して事態を解説し、「も〜、アベちゃん(仮名)は〜」かなんか言われている。
俺的にはどの話の登場人物もまったく知らない人ばかりなので基本的にというか本格的にどうでもいいのだが、先輩はンなことお構いナッシングで、カウンターの知り合いが誕生日と聞くやいなや、もはや酒の味なんてどうでも良くなっているような3軒目なのに高級シャンパンをオーダー。
まままままま。なんつってぐいぐい注いで乾杯し、じゃ1曲。
かなんか言いながら新沼 謙治の『津軽恋女』を熱唱するのだった。
つまりその街は、先輩にとって第何番目かの故郷だったわけだが、俺にとってもあの汚い部屋と夜ごとのハシゴ酒が忘れられないということで第八の故郷に認定されているわけである。
1年振りの第八の故郷。
先輩は引っ越してしまったのでもういない。
でも街は相変わらずだった。
なんとなーく、撮影場所としてイメージしていたガード沿いのエリアと反対方向に行きたくなって歩き出すと、人影まばらな図書館を見つけた。
ココでもいいな。
でも押さえ。
ってことで当初の予定通り、ガード沿いのエリアに向かったのだが、そこは思っていたより狭く、ヌケの悪いドン詰まり地帯だったので引き返すと、図書館の真ん前でランブレッタを押している花島君とばったり会った。
横には乳母車またはベビーカー。
押しているのは奥さんだ。
乗っているのは花島ジュニアだ。
撮影がてら、一家で散歩に出たらしい。
ジュニアの名前は瑠衣君。
これは完全に初耳だったのだが、ランブレッタにはLui 50clというモデルがあり、その名を取って、子供に「ルイ」と名づけるランブレッタ野郎が結構いるという。
さらに花島家では、奥さんがまさにこのLui 50clに乗っている。
つまり、猛烈にバイク好きな旦那が周囲の反対を押し切ってバイクの名前を付けたわけじゃないのである。
その全会一致で可決された感じが花島家にピースフルな雰囲気を漂わせていると思うのだが、瑠衣君の第一の故郷がこの街ってことは、瑠衣君と俺とは同郷の幼なじみということになるね!
ならず。
花島君はスカバンド『ROLLINGS』のHANA-KENとしてベースを弾いとります。
http://neoska.com/rollings/



