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山崎さんと近藤さんの出会いは2年前。
それは近藤さんの積極的なスカウト活動によるものだった。
ある日、山崎さんは自宅下でCBをイジっていた。
ポイントやら電気系やら。
分っかんね〜。
悩みに悩んでいた。
そこに、1人のオジさんがフラッと現れる。
オジさんはひと言「ソレ、こうすると分かるよ」と告げると、風のように去っていった。
山崎さんは「いや~懐かしいねえ。俺も若い頃、同じヤツ乗ってたんだよ」と喰いついてくる系のオジさんとは明らかに違う空気を感じていた。
「なんだろ? このオジさん? ヤケに詳しいなあ……何者なんだ?」
山崎さんの自宅下では、それから何度か同じような場面が繰り返された。
近藤さんと出会ってから1年が過ぎた頃。
山崎さんはCB350のカスタムに没頭していた。
ボロボロで化石状態だったノーマルCBが、日に日に変わっていく。
「コレ、見るたびにカタチが変わるなあ。君はホントにバイクが好きなんだね」
近藤さんは笑いながら見守ってくれた。
そんなある日。
「実は弟が放置してるトライアンフがあるんだけど、乗るかい?」
「乗ります!」
山崎さんは即答した。
でも保管場所が……。
すると事態は唐突に展開した。
「だったら僕の倉庫に置けばいいよ」
そして案内されたのが、ココだったのである。

2階には住人の洗濯物が干されていたりして廃墟感がないA面(斉藤由貴のデビューシングルでいうと『卒業』)

斉藤由貴のデビューシングルでいうと『青春』にあたるB面。建物中央のドアが魔界への入り口だ。

ずど〜ん! なんとブチ抜きのワンフロア! 東京ドームの2000分の1くらいの広さだろうか(勘)。実はこの物件、いろんなお店が入っていた元ショッピングセンターなのである。

骨だけ残してキレイに食べられたサンマみたいな状態の酒屋さん。ビールケースの保存状態は良いようだ。

これ以上の「スッカラカン」があったら見せてくれ。

なんとなくだが精肉店跡地っぽい。しかしシブいなこの脚立。

お店に対してお祝い的に鏡を贈るのは、縁起がいいとかなんかしらの理由があるかもなんだが調べない。

洋風なデザインのお店もあったようだ。レンガがあるだけで遺跡感が高まるのが不思議である。右隅にあるのは腐った南国のフルーツでも発掘された土器でもなくひっくり返されてろうそく立てになっている花瓶です。

大きなのっぽの古時計的な存在感を見せる換気扇。当然のごとく今はもう動かない。

開けると背中を向けた小林稔侍が君が代を歌っていそうなドアである。

解体途中なんだけど2階にはまだ人も住んでるしという当物件。一部ではハードコアな天井が、今か今かと待ち構えている(何を?)

おお、ここは人の気配がする。

各種ノコギリは解体作業用だろうか。

元洋菓子店の引き出しを流用した収納スペース。この引き出しに入れられるために生まれてきたかのようなタンクの収まりぶりが奇跡的である。

「昼間ならエンジン回しても苦情もないし、住み着いた野良猫と遊べます。子供の秘密基地の大型版ですね。でも、冬はメチャクチャ寒い! ストーブから離れると外気と同じです」

もともとバイク屋さんだった近藤さんは、猫好きで気さくなナイスミドル。バイクを前にするとその目は少年のように輝き、その思い入れの強さを感じさせてくれる。

エンジンの付いた乗り物全般を愛する近藤さんはロータス・エランも所有している。これだ!(って言われても)
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果たしてココは廃墟風のガレージなのか。
それともガレージ風の廃墟なのか。
元店舗査察官を悩ませる物件であることは確かなのであった。

