市川隆晶 & YAMAHA SR400(20090927) |

僕は驚いた。
だって11月だったから。
それまで住んでいた三陸のド田舎では存在し得ない11月のモスキート。
今思えばあの蚊は、地球温暖化の警鐘を鳴らしに飛んできた使者だったのかもしれない。
蚊に刺されるのは夏だけにしておきたいところだがそうもいかない時代。
でも、もうすぐ秋だね、って頃に蚊に刺されると、これが今年の刺され納め、って感じで季節の変わり目を感じたりする。
市川君を撮っていると右足のくるぶし付近に蚊の着地感があったので見下ろすと、白黒ツートンのでっけーヤツが吸血中だった。
その日は大相撲9月場所の千秋楽だったということも相まって、いよいよ夏の終わりを感じたのであった。
ということで、市川隆晶君に僕から3つの質問で〜す。
Q1:バイクに乗ろうと思ったキッカケっていうか、影響受けたモノを全部おせーて。
Q2:「バイクってサイコー!」って思った時のこと、おせーて。
Q3:史上最悪の出来事をおせーて。

中学1年ん時、『BACK BEAT』って映画観て革ジャンを購入。
でも「革ジャン着てチャリ」ってのがスゲー変だったんで、高校入ってすぐに免許を取りに行った。
バイクに乗るのも革ジャン雑誌からの影響が一番デカかったかも。
田舎なもんで、周りはヤンキー一色だったけど、自分は日本のヤンキーみたいな感じが嫌いで、「ザ・アメリカン」みたいなんに1人憧れて育ったのがキッカケ。
★ 2 ★
朝の4時とか5時頃。
イベントとかの帰りで家までの道のりにタクシーとかもまったくいなくて、信号に全然ひっかからんとフルスロットルで風に吹かれて涙流しながら帰ってる時に快感を感じる。
わっほい。
★ 3 ★
地元でYAMAHA XJ400Dに乗ってる頃、出先でよく故障して参ってた。
ガソリンスタンドもほとんどないし、真冬で手が冷たくなってロクに動かないのに2、3時間押して帰ったこともある。
真夏、汗だくになりながらキャブレターいじって直らない時は泣きそうになったりもした。
★ ★ ★
タマ〜に、「バイク買おうと思うんだけどオススメなのない?」と相談されることがある。
それは相談者が、僕が新旧洋邦ものすっごい数のバイクに乗ったことがあり、しかもそれぞれのバイクに対して的確なインプレッションを持っている……と勘違いしているから起こる現象なので「バイクを選ぶ前に相談する相手を選んだほうがいい」としか答えられないのだが、「SRにしようと思うんだけど」と言われたら「絶対いい!」と即答する。
古民家のようなたたずまい。
盛岡にある昼は定食屋、夜は居酒屋の座敷に置かれた、キレイに磨かれているけど軽く20年以上は使ってそうなテーブルから伝わってくる「込められた愛」みたいなものが満ちているパーツ群。
小さな橋の上で全開にしても、アッという間に100km/hオーバーになって前の車にぶつかりそうになってキンタマが縮み上がることもない単気筒エンジン。
「そりゃ好きになるわなあ」というチャームポイントはいろいろあるのだが、僕が一番素晴らしいと思っているのはポジションである。
僕は身長170cm。
これは日本人男子の平均身長だ。
SRがデビューしたのは1978年。
平均身長170cmというデータは1980年代からあんまり変わってないみたいなので(急にあいまい)、SRは身長170cm界隈の男を中心に支持され続け、ヤマハは日本人男子の平均身長が170cmより大きくならないことをひたすら祈りながら作り続けたんじゃないかなー(平均的にあいまい)と。
とにかく。
初めてまたがった時のしっくり感が尋常じゃなかった。
それは、「あれ? 前に来たことあったかなあ。初めて来たけど居心地がいいなあ、この居酒屋」って感じを超えて、太古の記憶が甦るような感覚だった。
いいぞいいぞSR!
つっても。
僕が絶賛しているのはノーマルのSRなんだけど。
市川君はSRに乗って7年。
乗り出した年に小学生になったちびっ子が、もう中学生、反抗期、母親への態度が急変、あんな子じゃなかった、育て方を間違えた、積木くずし(いかんせん古い)と考えると結構な長さだ。
そして気になった。
ロングセラー&ベストセラー、カスタムもひっくるめた大ブームを経てジャパニーズ・スタンダードとして定着した名車を選んだ1人の人間が、今、気になっているバイクとは?
SRに乗り続けながらもソソられるバイクとは?
ハーレーのスポーツスターをセパハンにして乗りたい。
赤いヨンフォア。
TRIUMPHのボンネビル。
CBXとかベスパも乗りたいかも。
ふむ。
やはりツインとか4発とかになるわけか。
じゃあ、一番気になっているのは?
意外な答えが返ってきた。
「初期型SRを見てみたい、というか乗ってみたいです」
恐るべきSRのフトコロの深さ。
好きになるって、こういうことかもね。
市川君はVOL.2に登場してくれた徳光康平君が所属するロックバンド『クロワニ』でドラムを叩いとります。
バンドのHP&my spaceのアドレスは下記で〜っす。
http://kurowani.com/
http://www.myspace.com/kurowanicom
