藤野雅史 & YAMAHA DT200WR（20091009）

　多摩川の河川敷を上流までDTで走ったことがある。
　板チョコみたいになってる斜面の護岸用コンクリートの溝にハマったりしてやたらコケて、コケるたびに吐きそうになりながらキックばかりしていたので、全ッ然「乗れた！」って記憶がないんだけども。
　このバイクは、「乗れんのかーッ！」って声がする。
　ウデのないヤツは振り落とす。
　勝手にコケやがれ。
　って、全然媚びてない。
　パンキッシュな鉄砲玉バイクだ。
　そんなDTのモタードカスタムに乗る藤野雅史君に、僕から３つの質問で〜す。
Q１：バイクに乗ろうと思ったキッカケっていうか、影響受けたモノを全部おせーて。
Q２：「バイクってサイコー！」って思った時のこと、おせーて。
Q３：史上最悪の出来事をおせーて。

　　　　　　　　　　　　　　　　　★　１　★
　ブーツ、革ジャン、ROCK、PUNK、GUITAR、煙草、サングラス……。
　自ずとバイクが結びついて、乗っている感じです。
　ごく自然な感じ。
　パッと浮かぶものだと、湘南爆走族、AKIRAの金田、クローズの武装戦線、横道坊主のALBUM『ROUGH ROCKS』のNorton、イージーライダー。
　　　　　　　　　　　　　　　　　★　２　★
　加速時の重力。
　都庁周辺の夜。
　ビル群の反射音。

　DTが納車されて友達と湘南に行った時。
　夕暮れの江ノ島……。
　湘爆好きにはたまりませんでした。
　　　　　　　　　　　　　　　　　★　３　★
　５〜６年前、飲酒のペナルティが今よりユルかった頃。
　大体どんな時でも移動手段はバイクだった。
　んで、吉祥寺でヘベレケになって意識朦朧な中、Uターンしようとしたら横転。
　顔を上げたらパトカーがいた。
　スルーされたけど「終わった……」と思いました。

　片側2車線の道路の左側を走行中、歩道で手を上げてる人を乗車させようとした右車線のタクシーがいきなり割り込んできた時、１人ゴケしました。
　そしたらタクシーが客を乗せずに逃げやがった！
　幸い、後ろを走っていて現場を目撃していたライダーが追いかけて連れ戻してくれたり、警察の事情聴取の際、タクシーに乗ろうとしてた人も、「いきなり割り込んできたのはタクシーで、バイクのお兄さんは全然悪くない」と証言してくれたりでなんとかなりました。
　その時のバイクは廃車になって、今のDTに至るわけです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　★　★　★
　鳴らない電話。
　じゃなくて、鳴ってんだけど出ない電話。
　ちょっと早かったかな。
　と、すき家でちっちゃい牛丼を食べる。

　続・鳴らない電話。
　じゃなくて、鳴ってんだけど出ない電話。
　エンジン掛けたりばたばた準備してるのかな。
　と、環７を走るバイクを眺めはじめたけどあまり来ないんですぐに飽き、向かいの不動産屋の前に１本だけ立っている相武紗季が両手でガッツポーズしているノボリをひたすら見る。

　新・鳴らない電話。
　じゃなくて、鳴ってんだけど出ない電話。
　これはもしや、僕が言った「じゃあ、今度の土曜日で」の土曜日を、１週間先のことと勘違いされたのでは……。
　と、環７を渡り、沖縄タウンなる商店街を散歩する。
　店の前のアスファルトにチョークでミッキーマウスだのプーさんだのがやたら上手く描かれている酒屋を発見したのだが、地面にディズニーキャラクターを乱舞させるコンセプトがイマイチ分かんないなあ、ってふと気付けば、ちっちゃい牛丼からもう１時間が過ぎている。
　やむを得ず、撤収。
　鳴らない電話じゃなくて鳴ってんだけど出ない電話がつながったのは、次の日の夜だった。

　「す……すんません！ 朝まで飲んで、起きたら夜でして……」
　藤野君は、やらかしていた。
　「携帯も落としちゃって……でも出てきたんですけど」
　藤野君は、完全にやらかしていた。
　しょーがねーなー。
　やらかす側から、やらかされる側へ。
　僕は、少し大人になった気がした。
　しかしまあ、酔っ払って落とした携帯が親切な誰かに拾われて交番に届くなんて奇跡だね、ツイてるね、ノッてるね。
　とか言いながら内心では、「それはツキを無駄に使ってるんだぜ、ぐへへへへ」と思いながら撮影日を再設定する。
　10日後に延期した撮影は、台風でさらに３日後にずれ込んだ。

　台風一過の銀杏並木。
　ギンナンの実がぼっとぼと落ちてビッチャビチャ潰れてくっせーのなんの。
　再び訪れた藤野君が住む街。
　台風を無事クリアして微笑んでいる相武紗季をまたひたすら見ていると、昼下がりの環７に２ストのパインパイン音が弾けた。
　会うなり藤野君は申し訳なさのカタマリと化して硬直気味だったのだが、僕は、反省を促すために敢えて藤野君との距離感を縮めようとせず無言のまま不穏な空気を発して地獄の釜のフタが開いたような息苦しい時間を演出しようかとも思ったけど思いとどまり、にこやかに撮影を進めた。
　だって少し大人になったから。

　撮影が終わると、藤野君がリュックからドン・キホーテの黄色いビニール袋を取り出した。
　中にはキリンラガーの350ml缶６本パックが入っている。
　そうだ。
　やらかした後の電話で好きなビールを聞かれたっけ。
　でもって「キリン以外飲まない」って答えたっけ。
　わーい。
　ビールがもらえるなら、やらかされるのも悪くない。
　「ホント、すんませんでした！ これ、お詫びの気持ちです！」
　お気遣いいただき恐縮です。
　少し大人なのは、藤野君のほうかもしれない。

　藤野君は2nd DEGREEというバンドをやっとります。
　HPとmy spaceアドレスは下記で〜す。
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=WARNING_WARNING
http://www.myspace.com/disdays2nddegree