最初に謝っときますインプレ HONDA STEED by 三陸警備隊 |
最初に謝っときます。

地下2階のフロアは客もまばらだった。
スクリーンには外国映画が流れている。
アメリカっぽいコースターとか灰皿とか。
一番搾りじゃなくてバドワイザー、またはコロナ的な。
ししゃもじゃなくてチョリソみたいな。
あいつらはどこ行ったんだ?
いつもの仲間が見当たらない。
枝豆、漬け物盛り合わせ、または単品でキュウリの一夜漬け。
みんな、俺を置いてどこに消えてしまったんだ。
彼は原宿に来ていた。
「ゲンさんの店に行こう」
友達が言った。
ゲンさんはバイクの世界では一部でそこそこ有名な人らしい。
彼はまったく知らなかった。
知らなかったが友達に誘われるまま、ホッケ等が出てくる気配がまったくないこの店に来ている。
音楽が流れ出す。
お。
これはあれだ。
ボーン・トゥー・ビーだ。
よってワイルドに振る舞おう。
と、意識している時点でもう彼はワイルドではない。
そしてワイルドに振る舞うように意識しつつ、ワイルドに振る舞うように意識していることを悟られないようにも意識している。
「いったい俺は何がしたいんだろう」
その夜の彼は、「いま出版社でバイトしてるんです」って言うんで、「じゃあ、雑誌作りたいとか思ってんだ?」って聞いたら「いや、やりたいことは曖昧です。ただ、オヤジと同じ仕事は絶対やりたくありません!」って答える実家住まいの大学4年生みたいに曖昧な存在だった。
純正のワイルド。
野生の無頼。
生涯不良。
彼も、彼の友達も、明らかにそのどれにも属していなかった。
2人の共通点は3つあった。
父親が校長先生であること。
バイクに乗っていること。
そして今、この店でワイルドを意識するあまり、バドだコロナだテキーラだとガブ飲みした挙げ句、ワケ分からん状態になっていることである。
練馬と川崎。
2人の住む街へと走る電車はとうになくなっていた。
トイレで用を足し、手を洗いながら鏡を見る。
「酔ってない酔ってない」
って自分に言い聞かせてる時点で彼はそーとー酔っ払っている。
「じゃあな」
「オウ」
かなんか言って午前3時。
表参道にエンジンの音が鳴り響いた。
★ ★ ★
無免許じゃなくて飲酒の「乗っても〜た〜」か。
彼はその後、246の上馬で友達と別れた後、愛車STEEDで中原街道のなんでもないカーブを曲がり損ねてブロック塀に激突。
新聞配達の青年の通報により駆けつけた救急車で第三京浜川崎IC近くの福住医院に搬送された。
あまりに泥酔していたため麻酔ナシで左足を24針縫われて(仮縫い。翌日改めて縫い直し)そのまま1週間入院することになったのだが、当時彼が……つか僕が勤めていたのはバイク雑誌の編集プロダクションでした。
大すんません。
タイムマシンで時間を遡って自分で自分を死刑にしてきますんで許してください。


