佐藤智義 & DUCATI 999R(20090713) |

Q1:バイクに乗ろうと思ったキッカケっていうか、影響受けたモノを全部おせーて。
Q2:「バイクってサイコー!」って思った時のこと、おせーて。Q3:史上最悪の出来事をおせーて。

子供の頃、コミックボンボンで連載していたポケパイのマンガを読んで、なんとなく「カッコいい」「面白そう」「やってみたい」と意識するようになりました。
とは言っても現実はそうはいかず、チャリンコで我慢してました。
その後、テレビで見たWGPマシンのカラーリングの美しさに魅せられてプラモデルを作りまくった。
お気に入りはロスマンズカラーのNSR500。
はじめはレーサーレプリカへの憧れが強かったですね。
それからは、モッズに憧れてベスパに乗ったりもしました。
その頃、信号待ちで隣に来た外人さんが乗っていたバイクに一目惚れ。
DUCATIのモンスター。
キレイなクロームカラーがまぶしかったなあ。
そして中免を取り、400ccのモンスターを手に入れました。
バイクのことは全然分からなかったけど、乗っていることが本当に楽しかった。
夏、冬問わずに乗ってました。
★ 2 ★
納車されたバイクに初めてまたがった時。
毎回、この瞬間だけはたまりません。
それから、慣らしも終わって、エンジンを高回転まで回した時の音と振動。
ゾクゾクッとくる何とも言えない加速感。
初夏、早朝の車がほとんどいないワインディングを、「今日は乗れてるかも?」ぐらいなペースで走れた時。
サーキットでタイムが更新出来た時もサイコーですね。
★ 3 ★
通勤用に749Rを使っていた時。
職場の前に神社があったんですけど、いつもその通り沿いに停めていたんです。
忘れもしない夏祭りの日。
休日出勤していつものように停めて、お祭りに行って、ヤキソバとタコ焼きを買って戻ったらバイクが無い……。
ほんの20分くらいの間に、です。
おそらくプロの窃盗集団に前から目をつけられていたんでしょうね。
ホントに最悪な気分でした。
教訓にもなりましたが、痛い思い出です。
その後しばらく、ヤキソバとタコ焼きが食えませんでした。
★ ★ ★
お祭りの最中に、バイクが消えた。
凍りついていく心と裏腹にタコ焼きはホッカホカ。
あのヤキソバさえ買わなければ……。
後悔しても愛車は帰ってこない。
THE 後の祭り。
ショックは大きかった。
999RとKTM 250EXC-Rモタードに挟まれて、「チャリンコ」って言うと怒られそうなバイシクルが並ぶ。
壁にはDUCATIのカウルが掛けられている。
THE 整然。
決して広くはないスペースを有効に活用した見事なレイアウト。
さすがデザイナーちゃんだ。
ここは佐藤君のガレージ。
筑波メインでサーキット走行を楽しんでいる佐藤君の基地である。
警備会社直通の非常ベル。
南京錠付きのゲート。
シャッター付きのコンテナ。
これは砦だ。
これだけでも鉄壁の守りではないかと思うのだが、999Rの後輪にはさらに、「これは2輪4輪用というより船用では?」って感じの超ごっついチェーンと、対テロ対策で考案されたとうイスラエル製のこれまた超ゴツな南京錠。
もはや武装だ。
祭りが1人の人間を兵士に変えたのである。
っつーと大袈裟ですね。
都会の真ん中の大通り。
曇り空の下。
「こういう天気のほうが、DUCATIの赤は映えるんですよ」
撮影を終え、佐藤君の仕事場にお邪魔した。
流れっぱなしの音楽。
クーラーもつけっぱなしで部屋はキンキンだ。
ガレージ同様、整理整頓された室内は、壁にツナギが掛けてある以外、バイクのニオイはほとんどしない。
コップ1杯の冷えた水を飲みながら話していると、佐藤君の居酒屋パトローラーぶりがあらわになる。
富士屋本店。忠弥。しげちゃん。
お気に入りの居酒屋を、地図まで書いて押しつけがましく推奨した帰り際、佐藤に声を掛けられた。
「今日の写真何枚かくださいね」
「いっすよ〜。モノクロでしか撮ってないけど」
「ええーー!? マジすか?」
強い語気。
曇り空のほうがDUCATI REDは映えるのにモノクロなんだ……。
それはない。
僕が『君はバイクに乗るだろう』のアートディレクターだったらそれは許せない。
あくなき美へのこだわり!
さすが売れっ子デザイナー!
と、お茶を濁すことも覚えた42歳の夏だった。
