時速300km/hって、どんな世界なのか? |
困ったなあ。
僕は300km/h出したことないし、今後出す予定もないんだよなあ。
ということで、高そうだったり速そうだったり、新しかったり古かったり、っていろんなバイクに乗ることを仕事としているバイク雑誌のライターちゃんなら1秒くらいは300km/h出したことがあるんじゃないかと思ったので聞いてみました。
お答えは、凌辱的な撮影にも笑顔で対応する紳士的な態度が業界で評判の北野富士男ちゃん(仮名)です。
★ ★ ★
★ざす。ご活躍で。早速ですけど、300km/hを出す前に、初めて「怖っ!」って思った最高速は何km/hでしたか?
ハッキリとは言えないですけど、一番印象的だったのはZX-10Rで出した250km/h。
2004年の夏ぐらい。
中央高速上り2車線の甲府付近。
初めて出した250km/hはソートー怖かった。
でもあのバイク、タンクがきんたまを痛めつけるようなカタチなんで、最高速うんぬんよりもチンコが痛かったことのほうを鮮烈に覚えてます。
★チンコはさておき、300km/h出した歴をおせーてください。
実は、実は。
「今のバイクはさんびゃっきろだかんね」とかなんとか言いつつも、公道で300km/hを出したことはありません。
初めての300km/hは2007年の夏。
ツインリンクもてぎのダウンヒルストレート。
もて耐の練習中、デジタルのスピードメーターを299km/hに張り付かせました。
ヘアピンをいい調子で立ち上がってこないと299km/hには到達しないんで、メーターが299km/hを指すのはいい立ち上がりが出来たってことですね。
GSX-R1000で、5速でした。
メーターは299km/hまでしか表示しないけど、そこからまだ回転数は伸びてたから推定310km/hぐらいかと。
2回目は2008年の夏、富士スピードウェイ。
199馬力になった新型ハヤブサの試乗会。
富士のメインストレートは下りなんで、そんなに頑張らなくても楽勝で出ます。
早い段階で299km/hで効くリミッターに当たっちゃうんで、怖さゼロ。
ちなみにB-Kingは250km/hぐらいでリミッターが効くけど、カウルがないくせにこちらも怖さゼロでした。
でも不思議なことに、後で常磐道で試したら220km/hぐらいで怖くなった。
なんでだろう?
★公道での300km/h未遂歴は?
2006年夏ぐらいの雨の東北道。CBR1100XXとZZR1100D。
ゴメンナサイ。270km/hぐらいでギブ。
2006年の秋口、夕方の湾岸線。BMW K1200S。
ゴメンナサイ。270km/hぐらいでギブ。
2007年夏、常磐道の下り。初期型ZX-9R。
ゴメンナサイ。260km/hぐらいで「9Rケッコー速いな〜」と感激しながらギブ。
2008年夏の東名高速下り。新型ハヤブサとZZR1400。
ゴメンナサイ。280km/hぐらいでギブ。
★いやいや、謝らなくてもいいんですよ。初めて300km/h出した時の気持ちはどんな感じでしたか?
「おっほほほ! 出たよ!」って感じ。
でもサーキットだから、300km/h出たってことより、「ヘアピンを上手く立ち上がれた!」って喜びの方が大きかった。
でもって、「この先、下りの90度右コーナーに向かうフルブレーキングが待っているのに、スピードメーターを見ていられる余裕があるってことは、まだタイムが詰められるな」とか考えてましたね。
結構冷静だな……。
つまんねー。
★性能的に間違いなく300km/h出るって言われるマシンだと、「ほんじゃいっちょ300km/h出してこましたろかい」って思うんですか?
僕は思わないですね!
公道じゃ場所や時間帯が限られるし、なんてったってあぶねーし。
でもまだ出したことがないから、条件が揃えば、「俺は公道で300km/h出した」って言うためだけに出しておきたい気持ちはあります。
★300km/hで聞こえる音を擬音で表現してください。
ぼぼぼぼぼぼぼぅぼぼぉぼぼぼぉぼぼぼぼぅぼぼぼぉ。
エンジンの音なんて聞こえませんね。
ひたすら風の音と振動だけ。
それとも前とメーターを注視しすぎて聞こえてないだけかな?
でも排気音は聞こえないと思う。
★景色の流れ方を抽象的でもいいからおせーてください。
景色が流れて視野が狭くなるというのは、嘘。
普通に見えるし、少ないスピードと変わらない。
原チャリで30km/hから60km/hへと加速しても変わらないのと一緒だと思う。
イキナリ300km/hじゃなくて、徐々に到達するわけだし。
だから到達するのが遅いバイクのほうが楽だと思う。
反対にすぐ到達できるバイクは景色が「ビャッ!」と流れる反面、高いスピードを長いことキープしないから、すぐまた普通に戻る。
到達できたかどうかは別として、250km/h巡航から300km/hに到達するまでに掛かる時間は、最新型のスーパースポーツより一昔前のZZR1100とかCBR1100XXとかのほうが長い。
それってつまり、自分が「あぶねー」と認識している速度域に侵入してしまっている時間が長いってことです。
だから怖い。
あ? 景色の流れ方とは関係ないか……。
ん? 関係あるか。
ゆっくり到達するマシンは慣れながらいけるから景色は流れなくて、すぐ到達するマシンは景色が流れたと認識する前に速度を落とすから結局流れない。
つか、集中してるから景色のことなんて気にしてない!
★当たる風は痛いんですか?
カウルからはみ出すと腕や足が持ってかれるけど、風そのものは痛くない。
革ツナギだと体に密着しているから非常に楽。
普段着は体にぺちぺち当たるから痛いな。
でもこれは150km/hでもそうでしょー。
★「ここでコケたら……」って考えますか?
それは思わない。
コケた後の惨事じゃなくて、転ぶ前の原因をいろいろ考えます。
★つか、300km/hの世界にいる時は何を考えてるんでしょう?
常に転ぶ原因を探していて、それを潰していく作業ですね。
260km/hを維持して、いつチャレンジをかけるかタイミングを見計らってる。
★つか、バイク以外のことを考える余裕はあるんですか?
サーキットではある。
公道ではあまりないんじゃないかなあ。
出したことないから分かんないけど。
★余裕があるなら何を考えるんでしょうか?
サーキットだと、常にタイムや次のコーナーのことを考えてる。
公道だと、「アイツが進路変更しそうだ」とか「左が空いたぞ」とか、やっぱり安全面やコースどりとかタイミングとか。
★気分が高揚して思わず鼻歌を歌ったりなんてことは?
僕の場合は冷静の極みで高揚はしませんね。
今何が起こっているのか、何が起こりえるのかを一生懸命分析してる。
で、パーキングに入って止まるとはじめて高揚してきます。
「280km/hだって! すっげー!」って。
だってカローラに乗ってる人からしてみれば飛行機のスピードだもん。
★その瞬間、チンコはどういう状態ですか?
かわかむり。
★1回出すと慣れるもんでしょうか?
慣れません。
何度かチャレンジしてるけど、260km/hがやはり一つの区切りのように思います。
★もう1回、もう1回って何度でも出したくなりますか?
条件が良ければチャレンジは繰り返すけど、やっぱ危ないから繰り返しません。
ピアスやタトゥーと一緒かな?
ピアスあける時は「痛そうだな~、嫌だなー、でも……えいっ!」「いッテーッ!!」みたいな感じでまず1個あけるけど、連続してはあけないでしょ?
だけど日が経つと「もう1個あけようかな」と思うわけ。
でも連続してあける人がいるのと一緒で、連続して300km/hにチャレンジする人もいるでしょうけどね。
中には300km/hで巡航できる人もいるかもしれません。
★300km/hは何秒くらい味わえるんですか?
根性が続く限り。
大抵2,5秒がいいとこだと思う。
やっぱ誰でも怖いじゃん! そんなスピード!
ほとんどの人はメーターが300km/hを指すのが目標で、300km/hを維持するのが目標じゃないと思うし。
★300km/h出した後ってどこかおかしくなったりしないんですかか? 耳鳴りがするとか腰が痛いとか毛穴が開くとか眠くなるとか。
膝を開いたら股関節を脱臼しそうになるけど、カウルにうずくまっているうちは特に何も起きません。
ZX-10Rの場合は常にチンコが痛い。
★チンコはさておき、今まで乗ってきたバイクの中で「このバイクの100km/hはハヤブサでの300km/hに値する」みたいなバイクはありますか?
マッハ系ですね。
500SSや750SSは振動がヒドいから、120km/hぐらいでハヤブサの300km/hに匹敵すると思うなあ。
出るか出ないか、そして何にもぶつからずに出せるかという要素の他に、「ブレーキが効かないかもしれない」「エンジンが壊れるかもしれない」っていう不安との戦いも300km/hの1つのポイントだと思うんで。
それと、CKデザインのコザル。
45km/hですでにハヤブサの300km/hを体感上では優に超える……!
しかも車高が低いから、歩いてる女子高生のアンヨ+αに見とれてすぐ事故りそうになります。
★250km/hと260km/hはあんまり変わらないとか、280km/hと285km/hは全然違うとか、200km/hから300km/hまでの速度域の中で、「ココからココは明らかに違う」ってスピードの分岐点を感じただけおせーてください。
サーキットだったらあまり関係ありません。
300km/hも200km/hも、カウルに隠れているうちはさして変わらないけど、カウルから体を出したり、その出した体に何かがぶつかったりすると急に速度を認識します。
前のバイクから石が跳ねたりして内腿に当たると、尋常じゃない青タンができますからね。
公道では260km/hが一つの分岐点だと感じます。
普通の人はその前にまず140km/h。
普通は140km/h以上出さないからね。
140km/hがクリアできれば次は180km/h、次は200km/h。
その先は260km/hまでは変わらず、260km/hから先はかなり怖くなってきます。
スピードそのものが怖いんじゃなくて、「何かが急に車線変更してきたら対応できなくなるのではないか?」という不安ですね。
反対に言えば、260km/hまでは落下物などのイレギュラーが起きても対応できる速度域だと感じます。
急な車線変更、落下物に対処できるのは260km/hまで。
260km/h以上はイノチ揺らしてるだけ。
★300km/hは一生に1回は味わうべき世界なんでしょうか?
いいえ。
でも、200km/hは味わってもいいと思う。
他の交通を完全に凌駕する無敵感。
それは200km/hで味わえ、素晴らしい気持ちになれます。
300km/hはもはや根性の話。
実際300km/hで巡航する人はいないでしょうから、結局は話のネタ作りだと思いますね。
★ ★ ★
出すか、出さないか。
スピードもチンコも、自分の責任で出せってことですね。