映画『赤い季節』潜入記:前編 ~壮大なボツの上に映画は立っていた~ |
2月18日。
『赤い季節』メインスタッフロケハン御一行様は例によって新宿スバルビルに8時集合。
でも「坂下さんは13時半に現地に来てくれればいっすよ」(沖主任)ってことで、レンタルバイクで代々木上原を出発したのが11時ってとこだったか。
目指すは銚子の近くの九十九里ビーチライン付近。
晴れてはいるけど何を着ようが太刀打ちできないくらいバイクだと寒い。
すばれるねえ(千 昌夫調)
すばれるけれども首都高から千葉に入っての高速道路までこれといった渋滞もなく順調だった。
だが、もうじき集合場所に着きますよ〜ってなあたりでチェーンが外れ、うっわ。高速走ってる時じゃなくて良かった……。つか間に合わない。イコール10数名のスタッフ御一同様に著しく迷惑を掛けてしまう……。バイヤ〜。という事態になってしまった。
こういう時は沖主任だ!
沖主任は「オキシュニン」ってカタカナにすると急激に薬の名前っぽくなる。
それはともかく沖主任に電話だ!
状況を説明すると沖主任は、「ええ〜〜っ! マジっすか!」とか奇声を発することもなく、「そうですか。今どこですか? 何が見えますか?」といたって冷静沈着に応える。
なんだろうこの落ち着きぶりは。
まるで俺に対して「まあ落ち着けって。ひとまずタバコでも吸ってさ〜」と言わんばかりじゃないか。
じゃあタバコでも吸うか。
タバコを吸いながらなんとかチェーンをこじ入れて待っていると、ほどなくして沖主任が登場した。
そして、俺がやりがちな、土地勘のない場所でヘタに動いて無駄な時間を費やしてドツボにハマる、といったこともなく再短時間で最寄りのバイク屋さんを見つけ出すことができた。
チェーンも含めたもろもろを調整してもらってひと安心。
じゃあタバコでも吸うか……って場合じゃない。
すぐにスタッフ一同の元へ向かわないと!
スタッフ一同は近くのホテルで遅い昼メシを食べていた。
というか既に全員食べ終わっていた。
申し訳ないことに俺の分も注文してくれていて、テーブルにはエビがどんぶりに突き刺さっている天丼が置かれている。
わー、美味そ〜。
天丼って1ヶ月に1回くらい食べたくなるんだよね〜。
でも、てんやの天丼は薄味の俺にはちょっとしょっぱいんだよね~。
丸亀製麺のかき揚げとしぶそばのちくわ天なんか安くて美味いよね〜。
つか早く食べないと。
ただでさえ俺は食べるの遅いんだから。
結構なプレッシャーを感じつつ自分なりに急いで食べ終わって出発した。
わ~い。
海だ。
現場は海沿いの九十九里自転車道。
バイクを乗り入れられるのか。
海をバックに走るとどんな感じの絵になるのか。
40キロくらいだとあのへんまで何秒掛かるか。
カメラカーを入れたとしてこの先にあるギャップを越えられるか。
冷たすぎる潮風を浴びながら検証していく。
そんな中、何かが騒ぐのだろう。
監督はときどき浜辺に降り立っては写真を撮ったり、カモメを追いかけ回したりしている。
基本的に監督は自由行動のようだ。
奥へ奥へと移動しながら続いた検証は日が傾きかけた頃に終了。
見事に体が冷え切った。
俺はここで撤収なのだが、フタッフ一同はさらに1時間ちょい移動して鹿島灘でのロケハンが待っている。
いっや〜、毎日こんなロケハンしてるなんて、映画作ってる人は大変ですねえ。
と、照明の前田さんに言ったらこう言われた。
「もう抜けられないからね」
わ……。
だから映画のスタッフって「組」なんだ……。
という1日だったのだが、結局自転車道での撮影は使用許可が下りずNGになってしまったので、俺は九十九里まで天丼食べにツーリングに行っただけって感じっす。
クランクインまで1ヶ月を切っているのに一部のロケ地が白紙に戻ってしまった能野組。
どうすんの! 沖主任!
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