広瀬 英政 & TRIUMPH T100(2010 0606) |
Q2:「バイクってサイコー!」って思った時。
Q3:史上最悪の出来事は?
特に影響を受けた記憶はないが、バイクに乗ろうと思ったキッカケは移動手段としてだと思う。
なんとなく手に入れた初めてのバイクは、少し古めの国産中古車。
それからバイクに夢中になってしまった。
★2&3★
なんとなく購入してしまった初めてのバイク。
納車の日。
鼻息荒く、はるばる電車を乗り継いで栃木県足利にあるバイク屋にたどり着いたのは21時を回っていた。
簡単な説明を受けて店を出たのは22時過ぎ。
ほとんどクルマも走っていない真っ暗な道を走る。
何も問題がなければ自宅までは2時間ほどで帰れるだろう。
しかし、信号で止まるたびにエンストしてしまう。
そのたびにセルを回してエンジンを掛けていた。
バイクの知識はほとんどなかったので、エンジンが掛かるからとりあえず大丈夫だろうと思っていた。
高速に乗る前にスタンドへ。
燃料を入れてエンジンを掛けようとセルスイッチを押す。
セルは回らなかった。
おや……?
冷静にキックペダルに足を掛ける。
3回ほどのキックでエンジンは回り出した。
「古いバイクだからな……」
何も知らない私は安易に考えていた。
東北道に乗ると、走行中にキャブから「パンパン」と激しい音がし始めた。
恐ろしくなって羽生パーキングに入る。
週末、そして夜。
地元のヤンキーが集まったパーキングは物騒な状態になっていた。
目立たないようにバイクを停め、自販機で冷たいジュースを買う。
しばらく休ませてからエンジンを掛ければ問題ないだろう。
20分ほど待ってからキーを回す。
ヘッドランプは点いた。
でもうっすらとしか光っていていない……。
セルスイッチを押した。
セルが回らない……。
キックでエンジンを掛けようとしても掛からない。
何度も何度もキックペダルを踏み込んだ。
気が付いた時には汗まみれになっていた。
夜とはいえ真夏。
サウナに入っているようだった。
そんな私の姿を発見したヤンキー達が周りに集まってきて冷かし始めた。
ヤンキー達にイジリ倒される。
もうダメだ。
エンジンを掛けるのをあきらめ、夜明けまで待って足利のバイク屋に引き取りに来てもらうことにした。
午前0時過ぎ。
真っ暗なパーキングには、もう私と動かないバイクしかいない。
非常に落ち込んでいた。
その日は友人と約束があったことを思い出した。
電話をして事情を説明して断りを入れる。
すると友人は私を不憫に思い、クルマで迎えに来てくれるというではないか。
その頃、友人には身重の奥さんがいた。
正直申し訳ない。
夜中の3時ぐらい。
身重の奥さんを連れた友人は、はるばる夜中の羽生パーキングまで来てくれた。
本当に嬉しかった。
今でも感謝している。
翌日、足利のバイク屋に事情を話して引き取りをお願いしたのだが、その日は忙しいからと断られた。
パーキングに放置したままでは非常にまずい。
自分でクルマを手配し、修理してくれるバイク屋を探した。
その後、どうにか乗れるようになったのだが、故障の原因は充電不良だった。
ブラシが磨耗していて充電されていない状態で納車されたので途中でバッテリーが上がり、エンジンが掛からなくなってしまったようだ。
ブラシの交換なんて素人でも出来るのに……。
必要以上に費用も掛かった。
今思えば痛い目には遭ったが、強烈に印象に残る出来事だった。
★ ★ ★
バイクを買ったその日、その足でトラブルに見舞われる。
これはアツい。
「バイクってサイコー!」
そんな出来事のひとつとして、多くのナイスガイが挙げる「納車の日」
その瞬間をサイコーのまま記憶出来る人もいれば地獄を見る人もいる。
初めてのバイク。
少し古めの国産車。
ナイトラン。
知識と経験不足。
1人きり。
広瀬君が今も忘れられない強烈な一夜には、最悪のドラマが展開する条件が見事に揃っている。
少し古めの国産車は1979年製のYAMAHA XS650SP。
これが90年代製のビッグネイキッドだったらヤンキーが喰いつくこともなかったかもしれないと考えると絶妙な設定である。
つか90年代製のビッグネイキッドだったらそうそう壊れないか。
パーキングの片隅で黙々とキックを蹴り続ける。
まとわりつくような熱気。
まとわりつくヤンキー。
したたる汗。
ベッタベタのグッチョグチョ。
なんなのよ?
なんなのバイクって?
もう要らねえよ、こんなの!
……ってなってもおかしくない状況の中、深夜3時に迎えにきてくれた友達。
地獄で仏。
最悪の中で最高。
少し古めの国産車は乗ってりゃいずれどこかが壊れたとは思うけど、なにも、よりによって、いくらなんでも、精子が逆流するくらい気分が盛り上がりまくっている納車の日に動かなくなることないじゃん。
しかしそこには理由がある。
納車の日にエラい目に遭っちゃう人は「持ってる」(本田調)のである
バイクの神様に選ばれたと言ってもいい。
「ノッケからこんな感じですけどどうしますか?」と。
「ノッケからエラい目に遭ってますけどバイク乗りますか?」と。
神様はそう聞いているのだ。
広瀬君の答えは「乗りま〜す」だった。
そして今も、最悪で最高だった夜を共に過ごしたXSに乗っているのである!
……ということで、撮影したトライアンフは流れ的にノータッチで終了です。
6年前に買ったトラを広瀬君がレストアしたのが『トリニティースクール』
http://homepage2.nifty.com/TRINITYSCHOOL/
そのトリニティで広瀬君がお世話になった栗崎さんが、九州・熊本で開業したスペシャルショップが『トラヴィス・サイクルズ』で〜す。
http://blog.livedoor.jp/traviscycles/