号外 中野真矢、引退! |
昨日の夜21時くらい。
ガラ空きの銭湯で頭を洗っていると、隣の隣で不審な動きをしている男がチラッと視界に入った。
不審な動きというか、アゴを引いて頭を下げたまま動かないのである。
ポーズ的には「ガックリ……」って感じ。
溝の口の悪徳パチ屋で10万円のストレート負けを喫して落ち込んでいる感じ。
どうしたんだ。
なにがあったんだ。
見たすぎる。
でも、おもむろにジーッと見るのもなんなんで、とっとと頭を洗って立ち上がり、ジェット風呂というギターウルフ的なネーミングの浴槽に陣取ってなにげなーくチラ見すると。
なんと。
男は。
毛抜きで乳毛を抜いていた。
一心不乱に。
1本たりとも許さないって感じで5分くらい。
家に戻って嫁さんに一応報告したのだがあまり喜んでもらえなかったので、録画しといた『ロンドンハーツ』と『子連れ狼』を見ながら里芋とレンコンをツマミにビールとウイスキーを飲み、ほろ酔ったなあって感じで真夜中、パソコンを開いたら乳毛ショックが吹っ飛んだ。
【中野真矢、引退!】
ということで、「2009年 バイク界6〜8大ニュース」に、総合司会特権でこの1本を追加したいと思いヤス。
WGP 250cc、最高峰の500cc、Moto GP、WSBと、チャンピオンを目指して世界で戦い続けた中野選手の11年。
その中のほんの一瞬だが、バイク雑誌で編集をしていた頃、中野選手の人柄に触れる機会があった。
レースにまったく興味がなかった僕が中野選手に惹かれたのは、バイク雑誌の片隅に載っていた1枚の写真だった。
「中野真矢選手 磐田消防署にて一日消防署長」
凛々しい制服姿。
凛々しいタスキのかけっぷり。
凛々しい敬礼ぶり。
素晴らしい。
この人なら「一日編集長」ってタスキをかけてくれるかもしれない。
そう確信した僕は、すぐに「一日消防署長姿に感動したので、本誌で一日編集長をやっていただけませんか?」とオファーを入れた。
答えはまさかのイエスである。
中野選手は編集部にリクエスト通りのスーツ姿で現れた。
そしてタスキをかけてくれた。
敬礼もしてくれた。
イメージを壊さない程度に珍奇な撮影にも笑顔で対応してくれた。
どこを切っても好青年。
この人なら「娘さんを僕にください」と言われて断る父親はいないだろう。
いきなり好感度ナンバー1である。
現場にいたスタッフ全員がアッという間にファンになっていた。
世界は獲れなかった。
どんだけ好青年でも世界の壁は厚かった。
でも、世界中のサーキットを走り続けて、世界中の少年少女に「バイクってカッコいい!」って思わせたんだからカッコいいぜ。