小野寺詠二 & DUCATI SPORT1000(20090726) |
Q1:バイクに乗ろうと思ったキッカケっていうか、影響受けたモノを全部おせーて。
Q2:「バイクってサイコー!」って思った時のこと、おせーて。
Q3:史上最悪の出来事をおせーて。
ギターウルフとかブランキーとか好きだったんですけど、地元にいた頃はDioに乗ってまして、「革ジャンでバイク!」には、致命的なことに興味ありませんでした。
キッカケはやっぱり上京ですね。
地元は「バイク=1年上の不良で、チンピラ」な感じで、「バイク=ロック」はあり得ませんでしたから。
でも東京に来たら、カッコいい人達ばっかりじゃないですか!
不良は不良なんでしょうけど、質が違いましたね!
★ 2 ★
去年、地元までバイクで帰ったんですけど、45号線の海、サイコーでしたね、リアス式で。
クルマとは違う感じで。
走り切った達成感もサイコーでした。
★ 3 ★
納車3週間でコケたことです。
雨の日だったんですけど、環七の直線で。
ショックでした。
バイクは傷だらけ。
自分は無傷でしたけど、デッドラインは越えてましたね。
高校生の頃、夜中にDioで走ってて田んぼに突っ込んで泥だらけで家帰ったのも最悪でしたね。
とりあえずDio時代は転びまくりでした。
★ ★ ★
エイジ君のふるさとは、宮城県の気仙沼だ。
そして僕の田舎はそこから海沿いを北に上がった岩手県の宮古という小さな街。
おお、三陸つながり!
俺達リアス式!
磯臭い握手をしようじゃないか!
と、盛り上がると思いきやそうはいかない。
気仙沼と宮古は同じ三陸だからこそライバル関係にある。
問題はサンマだ。
秋になると二つの港町の間ではサンマを軸とした抗争が勃発する。
初物のサンマは北海道産。
彼らはまだ若い。
大相撲の四股名風に書くと若秋刀魚。
「まだ脂が乗っていない」なんて言われるわけだが、若いんだから仕方がない。
ほんじゃベストなセッティングが出ているサンマはいつ、どこで獲れるのか。
その覇権を争っているのが気仙沼と宮古なのである。
北海道から太平洋を南下してくるサンマたち。
プランクトン等を食べたいだけ食べてぐんぐん成長しながら、ハードなトレーニングで身体を鍛え直した彼らは、前人未到の7場所連続優勝を果たした頃の朝青龍のような……つまりは、「脂が乗りまくった」全盛期なのだ。
と、僕は42年間思っていたのだが先日、何を買っても間違いなく美味い近所の魚屋のオバちゃんによって、僕の「三陸サンマ最強説」は根本からひっくり返されてしまったのである。
オバちゃん曰く最強なのは北海道産であり、気仙沼や宮古に揚がってくるサンマは泳ぎ疲れて身体が痩せちゃってるから美味しくないというのだ。
えっ……ええーーーっ!?
絶句ッス。
絶句ッスピストルズっす。
そりゃないぜ。
ちくしょう。
泣けてくらぁ。
しかし気仙沼人と宮古人は、自分トコの港に水揚げされるサンマこそが朝青龍で、オマエんとこはせいぜい魁皇(それはそれで立派なもんではある)だべ! と思っているので抗争は永遠に続くのだ。
実際、目黒で開催される2つのサンマ祭りでは、気仙沼と宮古がバトルを展開している。
片や気仙沼港全面協力の「〜目黒区民まつり〜目黒のさんま祭」(実行委員長会長・松井敏郎氏)。
片や宮古市全面協力の「目黒のさんま祭り」(実行委員長・中崎政和氏)。
絶対に負けられないサンマがそこにはある。
それはともかく初めて会った時、エイジ君は仲間達にツッコまれまくっていた。
一言ひとことに。
着ていたTシャツに。
しまいにゃ顔に。
ノーガードでツッコミを浴び続けているエイジ君だったが、バイクに乗っているというので「今度写真撮らせてよ」とお願いした。
周りからは「コイツはやめといたほうがいっすよ!」という反対意見しか聞こえてこない数的不利な状況だったが、無視して撮影に踏み切った。
目黒通りから自由通りに向かう細い道。
木漏れ日が涼しげな公園を見つけた。
小学校のクーラーとかのメンテナンスに入ってる感じの設備屋さんがベンチで一服している。
ちっちぇー犬を散歩させているマダム。
大地主的な旧家の庭で、ビニールプールに入って遊んでると思われる子供の声が夏休みって感じだなあ、でもやかましいなあ、平和な日曜日の午後のひとときの秩序を乱しているなあ、と思いながら待っていると、ROLLのシャツで決めたエイジ君がドゥカティに乗って現れた。
まだ新車のおもむき。
キレイに乗ってるじゃないか。
しかしよく見ると、マフラーに擦りキズが入っている。
聞けば2回転んでいるのだという。
「どこでコケたの?」
1度目は雨の環七、の直線。
2度目は晴れの環七、の直線。
リーチだ。
これでもう1回、曇りの環七でコケたらまさに環七フィーバーだ。
ある意味、直線番長。
2度とも自爆でカラダも大したケガはなかったそうだが、エイジ君。
君は直線でコケる秘技でも会得してるんかい!
思わずツッコミたくなった僕だった。
1週間後。
アンケートの回答が送られてきた。
そこにはやたら「DUO」という言葉が出てくる。
分からない。
聞いたことがない。
もしかして若者が使う新種のネット用語なのかと思いきやそうではなかったようだね、エイジ君。
それはDioだろ!
気仙沼ではDUOなのかもしれないが。
そして撮影から1ヶ月後。
夜の環七をクルマで走っていたら偶然、エイジ君を見掛けたのだが、左手にコンビニの袋をぶらぶらさせながらハンドルを握り、ゆらゆら走るその緊張感のなさぶりに、ああ、この男なら直線でコケるかもなあ、と納得させられた次第です。